セネガルの漁業とそれを支える水産加工のおばちゃん達について(第1回)

 

主任コンサルタント 長島 聡

 

セネガルは大西洋に面した西アフリカに位置しており、人口は約1,200万人、西アフリカの中では比較的経済発展をしている部類の国に入ります。ただし、他のアフリカ諸国と異なり、セネガルでは鉱物資源があまり豊富ではなく、重要産業は農業や漁業などの一次産業が主体です。私はこのセネガルの海洋漁業海上運輸省( Ministère de l’Economie Maritime, de la Pêche et des Transports Maritimes )に2008年1月から2010年3月まで、JICA長期専門家・水産行政アドバイザーとして派遣されていました。

 

セネガルにおいて、漁業は約60万人の直接および間接の雇用を生み出しているほか、セネガル人の消費する動物性たんぱく質の70%が水産物であることなど、非常に重要な産業です。セネガルの漁業の概要について少し説明しますと、年間の漁獲量は約40万トンで、そのうちニシン科の回遊性浮魚の漁獲が約80%を占めています。このニシン科の回遊性浮魚は、セネガルの現地語の一つウォロフ語では「ヤボイ」と呼ばれており、鮮魚でもセネガル国内にて安価(日本円で20円/kg程度)で流通しています。セネガルの代表的な料理である「チュブジェン(魚と野菜の炊き込みご飯)」にも良く使われます。

 

セネガルの代表的な料理「チュブジェン」

 

また、このヤボイの加工品は燻製または煮沸した後で乾燥(国内向けは塩を加える)して作られるもので、現地名で「ケチャ」と呼ばれ、冷蔵庫など鮮魚の保存手段のない内陸部の人たちが食べられる貴重なタンパク源となっています。

 

セネガルの代表的な水産加工品「ケチャ」

 

このケチャを始めとする水産加工を行っているのは、40~60歳代を中心とした「おばちゃん」です。このおばちゃんは、村の中の働き者です。

 

魚が大量に入手可能な時は、それこそ朝から晩まで加工場で働き、一日中作業をしています。お昼時にも家には帰らずに加工場でお昼を食べ、小さい子供がいるおばちゃんは、大きい子供や家族に面倒を見てもらっています。セネガルに限らず、開発途上国の男性は十分な収入がなく、あっても自分で使ってしまったりすることも多いため、おばちゃんたちが働き、その現金収入で家庭を支えています。

 

加工をやっているおばちゃんは、小学校を卒業していない人も多いです。が、そんなおばちゃんたちでも、学歴のある人と同等かそれ以上にお金を稼ぐことができる水産加工の仕事に誇りを持っているように見えます。

 

加工場のおばちゃん達

 

 

次回はそんなおばちゃんたちの生活について詳細をお知らせしたいと思います。

 

セネガルの漁業とそれを支える水産加工のおばちゃん達について 第2回