セネガルの漁業とそれを支える水産加工のおばちゃん達について(第3回)
主任コンサルタント 長島 聡
第1回では、セネガルの水産加工のおばちゃんのことを、第2回ではセネガルの水産加工の技術について紹介しました。最終回の今回は、そんなおばちゃんのために良かれと思ってやったのに、文化的な問題でうまくいかなかった事例を紹介します。
水産加工のおばちゃんたちの業務は過酷です。特に「煮沸法」でケチャを作っているおばちゃん達は、一日中炎天下で作業していることから、腰痛等、健康上の問題を抱えている人がほとんどです。第二に、そのようなおばちゃんの現状を見ている子供たちが水産加工をやりたがらないためか、水産加工に従事しているおばちゃん達の高齢化が徐々に進んでいます。
そんなある日、「煮沸かまど」を使っているある水産加工場を訪問した際、おばちゃん達から「燻製かまど」を作ってくれないかと頼まれました。彼女たちは、他の援助機関の支援で、「燻製かまど」の研修を受け、自分達も「燻製かまど」を使ってみたいというのです。私も燻製かまどの利点はわかっていたので、少しでもおばちゃんたちが楽に作業ができるようになればと、試験的に「燻製かまど」を作りました。燻製かまどがあれば、作業は10分の1で済むし、一日中炎天下で作業しなくても良いので、おばちゃん達も喜んで使ってくれるだろうと思ったのです。業者さんとの共同作業の末、とてもきれいな燻製かまどが完成しました。しかし、このかまどは最初の数回使われた後、使われなくなりました。なぜだと思いますか?
製造を支援した燻製かまど
第一に、セネガル人のおばちゃんというのは非常に保守的だということが理由の一つに挙げられます。新しいことには何でも飛びついて行くのではなく、「私のやり方のほうが優れている」と言って昔ながらのやり方を続けることを好みます。これは、ある意味、厳しい環境の中で生活してきているおばちゃん達の生活の防衛策と言えるのではないでしょうか?昔ながらの方法は、効率は悪くとも少なくとも自分達は慣れているため、失敗はしないので確実であるということです。
第二に、セネガルのおばちゃん達はグループを作るのは好きですが、団体で行動するのはあまり好きではないということです。おばちゃんたち同士は一見仲良く見えるものの、誰かが自分たちのお金を騙しとるのではないかと、いつも他人を疑っているのです。
第2回で述べたように、燻製かまどは大量の原料を一度に処理できるのが良い点なのですが、個々のおばちゃん達が原料を購入するだけの資金がなければ使用することができません。ここで、おばちゃん達が団体行動したがらないというのがネックになってしまいました。共同で原料を購入し、完成した製品を公平に分配すれば仕事も楽になり、大きな資本がなくてもこのかまどを使えるのに共同で作業をしたがらず、今も昔ながらの「煮沸かまど」で魚を加工し続けています。
自分達から燻製かまどを作って欲しいと頼んできたのに、作ってあげたら使わない、ということで本当にこのときは困りました。
このように手間がかかり、頑固なセネガルの水産加工のおばちゃんですが、やはり憎めません。水産加工は大変な仕事ですが、これからも家族のために頑張って仕事を続けてほしいものです。
セネガルの漁業とそれを支える水産加工のおばちゃん達について 第1回
セネガルの漁業とそれを支える水産加工のおばちゃん達について 第2回